大工道具の基本 指矩(さしがね)
- 投稿日:2019年 3月 1日
- テーマ:コラム
指矩(さしがね)差し金、曲尺(かねじゃく)とも言います
線を引く、寸法を測る、直角を出すなど大工道具のなかでも最も基本的な道具である「指矩」
一見ただの直角に折れた定規で上に書いた三つの使い方は一目見ればわかると思いますが
これが実はそれだけではなく非常に奥が深い
まず伝統的な形態の指矩では表(表目)に尺貫法による寸、分、5厘の目盛が刻まれています
これで材料に実寸で墨をしたり勾配を測ったりします
そして裏(裏目)には「角目」と「丸目」と言う違う目盛があります
「角目」とは表目に2の平方根=1.41421356(ひとよひとよにひとみごろ)を掛けて
あります、つまり中学で習った直角二等辺三角形の1:1:√2に対応しています
これで何ができるかと言うと、たとえば丸材(丸太)から取れる角材の最大寸法が一発で出せます
つぎに「丸目」は表目に円周率=3.14159265が掛けてあります
丸太の直径を丸目で測ればその丸太の円周長さが出ます
これらの機能を応用して、あらゆる角度、部材寸法、比率などを簡単に正確に出せる指矩
さらに、これらを複雑に組み合わせて計算尺のように使うことで三角関数や微積分といった
計算も可能だそうです
このような高度な指矩術は、もとは伝承によって受け継がれた秘伝の技だったものが江戸時代に
理論化・体系化され「規矩術(きくじゅつ)」として成立したと言います
CADはおろか電卓もレーザーも無かった時代、複雑な角度で組み合わされ、屋根に反りやむくり
をつける日本建築の曲線美は高度な計算(洗練された「感」もあるが)によって成り立っている
それをすべて指矩一本から作り上げる大工の技術には本当におそれいります
宮崎県,天岩戸神社
しかしコンピューターによって設計し、機械化されてゆく現代の建築現場において
このような職人技術が活かされる場面はどんどん減っていっています
これも時代の流れかもしれませんが、伝統技術というものは受け継いでゆきたいものです
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